◎世界の見取り図THE WORLD IN CONTEXT

世界・自動車 · EVの普及差

世界の新車4台に1台がEVなのに日本は3%未満――2026年IEA報告が示す普及差の理由

IEAの2026年報告が示す2025年の電動乗用車販売を読みます。BEV・PHEVとハイブリッド車、新車販売と保有台数を分け、日本との普及差に関わる価格・車種・充電環境を検討します。

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事実、各国の主張、編集部の解説を区別して紹介します。記事の更新日は資料確認日です。速報や現在の戦況・選挙予測を保証するものではありません。

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普及率は、どの新車を数えた値か

世界では電気自動車が急速に広がっているという。ところが日本の街で新車を見ても、すべてが電気で走る車に変わっているようには感じられない。中国ではすでに新車の半分以上がEVだというニュースもあり、数字は国ごとに大きく違う。日本の消費者が慎重なだけなのか、それとも充電環境、車の値段、政府の制度に違いがあるのか。

違いを生むのは単一の国民性ではなく、車の購入価格、利用できる車種、住まいの充電条件、税制・補助金、メーカーの供給構造が組み合わさっていることだ。 国際エネルギー機関(IEA)の『Global EV Outlook 2026』は、2025年に世界で販売された電気自動車が2,000万台を超え、新車販売のおよそ4分の1を占めたとする。しかし日本では3%未満、中国では約55%。同じ「EV普及」という言葉でも、買う人が直面する条件は大きく異なる。この記事では、数字の意味をそろえたうえで、何が販売割合を変えるのかを具体的に追う。[1][2][3]

02

まず「世界の4台に1台」は道路に走る車の4台に1台ではない

最初に分母を間違えると議論全体がずれてしまう。IEAの「25%」は2025年に世界で販売された新しい乗用車(cars)のうち電気自動車が占めた割合であり、地球上で現在走っている全自動車の25%がEVになったという意味ではない。同じIEA報告は、世界の保有乗用車のストックに占める電気自動車の割合を約5%としている。新車の販売動向は短期間に変わっても、すでに使われている車の入れ替わりには長い時間がかかる。新車と保有車両という別々の分母を混ぜると、普及速度を実態以上に大きく、あるいは小さく見せてしまう。[2][3]

このIEA統計の電気自動車は、バッテリー式電気自動車(BEV)と、外部から充電できるプラグインハイブリッド車(PHEV)を指す。一般的なハイブリッド車(HEV)や燃料電池車(FCEV)は、この新車販売比率に含まれない。日本の販売を語る際、この違いは特に重要だ。IEAは2025年の日本でEVの新車比率が3%未満だった一方、一般的なハイブリッド車が新車販売のおよそ3分の1を占めたと記述している。日本で電動化がまったく進んでいないのではなく、主としてどの方式が選ばれているのかが違う。[3]

各国の数字も同じ時点を比較する必要がある。2025年の新車に占めるIEA基準のEV比率は、中国が約55%、欧州が28%、米国が10%弱、東南アジアがおよそ20%、日本が3%未満とされる。欧州とEUの地理的範囲や市場統計の区分、日本の軽自動車などの市場構造に差があるため、数値だけで一国の政策の成功を判定することもできない。とりわけこれは2025年の実績を2026年刊行物で振り返った値であり、2026年10月現在の確定販売結果ではない。[2][3]

03

車を買う瞬間の値札が、国によって違う

EVの走行費用は一般に燃料を使う車より低くなりやすいが、その利点だけで車が選ばれるわけではない。購入時に数十万円、あるいはそれ以上の差額が必要なら、家計は将来の燃料費節約と購入資金の負担を比べる。車種や地域によって価格差が縮めば、同じ人でもEVを選びやすくなる。利用できる安価な車が増えた国と、高い車種が中心の国では、販売比率が違っても不思議ではない。

IEAは2025年、中国で販売されたバッテリー式EVの約70%が、一般的な内燃機関車の平均価格より安かったと述べる。これは同型・同装備・同寸法の車を一台ずつ比較した結果ではない。中国市場の多様な小型EVを含む価格分布と、従来型車の平均価格を比較した数字だ。同じ報告によるとタイでは直近2年ほどEVと従来型車の価格がほぼ並んだのに対し、インドネシアでは2025年にもEVの平均価格が従来型車を約40%上回った。購入段階での負担の差を示す一例であり、同じ国のすべての車種にこの比率が当てはまるわけではない。[2][3]

価格の背景には生産拠点と部品供給もある。IEAによれば中国は2025年の世界の電気自動車生産のほぼ4分の3を担い、電池セル生産でも8割超を占めた。量産規模、電池と車体の供給網、メーカー間の競争は価格を左右し得る。ただし生産量が多いという事実だけで低価格の原因を一つに決めることはできない。市場での競争、賃金、電池原料価格、為替、貿易関税、車両の大きさなど複数条件がある。中国から輸出される比較的安価なEVが東南アジアの選択肢を広げたことも報告されている。[2]

04

家で充電できる人と、できない人は別の買い物をしている

車は買った瞬間だけでなく、その後何年も使う。ガソリン車なら給油する場所を探せばよいが、EVで外部充電による電気走行を利用するには、充電設備と時間を確保する必要がある。自宅の駐車場で夜間に充電できる人と、集合住宅で自由に充電設備を設置できない人とでは、必要な手間が異なる。住宅形態や充電設備へのアクセスが変われば、同じ車を見ても「使いやすさ」の評価は違ってくる。

IEAの充電章は、2025年の世界の家庭や職場など、一般公開されない小型車向け充電ポイントが推計4,300万基を超え、多くのEV所有者が自宅充電を選好すると説明する。自宅の専用駐車場で充電できる理由は、費用と利便性だ。利用者は毎日急速充電器へ行かずに済む。一方、集合住宅では住民間の合意、電気設備の容量、工事費用、駐車区画の条件などが導入の壁になる。IEAは日本で2025年のEV販売比率が低い要因として、集合住宅の多さと専用駐車・充電へのアクセス、充電インフラの制約、メーカーが長くハイブリッド技術を重視したことを挙げている。[3][4]

ここから「日本は充電器の数だけ増やせば中国並みになる」と結論づけるのも誤りだ。急速充電器が道路沿いに多くても、住まいで毎日の充電をできない利用者の課題は残る。反対に、通勤・買い物の距離が短く、自宅に設備を設けられる人にとっては、公共の急速充電器を毎回使わずに済む場合がある。自宅充電の可能性、近くの普通充電、長距離時の急速充電という別々の用途を見ないと「充電設備が足りるか」は判断できない。

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補助金は効くが、その変更は販売時期を大きく動かす

政府の制度も選択の条件を変える。新車購入時の補助金、税額控除、排出ガス・燃費の基準、企業が守るべき販売車両の構成などは、消費者の実際の負担とメーカーの製品計画に影響する。IEAは2025年、欧州の大きな市場でEV販売が30%超伸びた背景として、欧州連合の乗用車向けCO₂基準が厳しくなり、メーカーが価格や販売戦略を見直したことを挙げる。これは購入者だけでなく、製造側にも別の車種を売る動機ができたという意味だ。[2][3]

米国では2025年のEV販売比率は10%弱で概ね横ばいだったが、税額控除の終了と年末の販売落ち込みが同じ時期に起きたとIEAは記している。ただし、制度変更と販売変化が同時に見られたことは、他の影響を除いて控除終了だけで結果が決まったと証明するものではない。値引き、金利、消費者の購入時期の前倒し、車種の供給なども変動する。中国でも買い替え支援策が一時停止したことが販売の伸びを鈍らせた一因として挙げられる。補助金の有無だけで年間の数字を読むのではなく、開始と終了の時期を確認したい。[2][3]

2026年には中東の紛争に伴う原油価格の上昇が、車の利用費用を考える材料にもなった。IEAは2026年4月の燃料価格と自宅充電を前提とした分析で、欧州連合のEV利用による年間の燃料費節約額が2025年の条件に比べ35%増えたとする。これは各ドライバーの実際の請求額が一律35%変わったことではなく、特定の価格条件を置いた比較だ。高い燃料価格が必ずEVの購入増加に直結するとも限らない。車は注文から納車まで時間がかかるため、価格変化が実際の販売に現れるまでの遅れもある。[2][4]

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中国が増えて日本が少ないのは「好み」だけで説明できない

国の普及率は、個々の消費者の判断を集計した結果だ。ある家庭がEVを選ぶかは、「環境に良いと思うか」だけでなく、家計の支払余力、家族の人数、駐車環境、行動範囲、電池に対する不安、使える整備網、下取り価格などの条件が関わる。さらに国内に競争力のある小型EVが多数ある国と、購入時に高価な輸入車が中心になる国では、選択肢そのものが異なる。

たとえば同じ予算の二つの家庭を想像しよう。家庭Aは集合住宅に住み、駐車場にコンセントがなく、休日には遠方へ移動する。一方、家庭Bは専用駐車場があり、日常の移動は近距離中心で、自宅で夜間に充電できる。両者が同じEVを試乗して高く評価しても、購入後の使い勝手は異なる。これは説明のための架空例であり、特定国の家庭の平均像でも、実際の購入者に関する調査データでもない。EVをためらう理由には、技術への態度だけでなく利用環境の違いがあることを示している。

日本のハイブリッド車の販売比率が高いことも、こうした現実に沿って読むべきだ。ハイブリッド車はエンジンを残して燃費を改善する方式なので、日常の給油方式を大きく変えずに導入できる。BEVは走行を続けるために外部充電が必要だ。一方、PHEVは給油してエンジンを使う走行もできるが、外部充電による電気走行の利点を生かすには充電環境が関わる。[5][6]どちらが適するかは居住環境、用途、電源構成、走行距離によっても変わる。世界のEV比率というひとつの数字から、日本の利用者の選択が正しいか間違いかを判定することはできない。

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2026年の予測23百万台は、2026年の確定実績ではない

IEAは2026年の世界EV販売が2,300万台に達し、新車販売の28%となる見通しを示した。しかしこれは同年5月の報告に含まれる予測であって、10月時点の年間確定値ではない。政策の変更や燃料価格、供給網の混乱、景気などで実績が変わり得る。2026年の第1四半期についてIEAは世界販売がおよそ390万台で前年同期比8%減とする一方、欧州や中国を除くアジア太平洋などでは大幅な増加があったと記載している。「世界は減った」と「各地では増えた」は統計の対象地域が違えば同時に成立する。[1][2][3]

さらに販売台数が増えても、その地域の車が走る際の電力がどのように作られるか、電池の生産・廃棄にどのような負荷があるかは別の問いだ。燃料を使わないから生涯の環境負荷がゼロだと説明するのは不正確で、適切な比較には製造、利用、回収の範囲をそろえた分析が必要になる。この記事は普及率が異なる理由を主題とし、車種ごとのライフサイクル排出量を算出したものではない。

高性能な充電器が増えても、車側が対応しなければ短時間充電はできない。IEAの充電章は250kW超で充電できる車が2010年以降に販売された電気乗用車の約4%に限られると説明し、宣伝される充電時間を全車種の実用性能として受け取らないような注意を促す材料を提供している。車を買う人は、カタログの最大速度だけでなく、自分が使える充電設備でどれほど時間がかかるかを見る必要がある。政策担当者なら、道路沿いだけでなく集合住宅や地域の電源設備の条件を調べることが重要になる。[4]

08

「所有コストが安い」を自分の計算に直すには

走行費用の国際平均だけで自家用車の採算を決めないことも大切だ。購入時には車両本体価格に加え、補助金が実際に受け取れる条件や税負担があり、利用期間には充電代・保険・整備・タイヤ・駐車・電池や車両の下取り価格がある。ある家庭では夜間の家庭充電が安くても、別の家庭では公共の急速充電を頻繁に使うため費用が大きくなる。年間走行距離が短いと燃料費の節約が購入時の価格差を埋めるまで時間がかかる一方、長距離を走る仕事用の車では運行費用の差が大きくなり得る。

比較するには、まず同じ用途を満たす二つの車を選び、保有予定年数で費用をそろえてみる。未来の燃料価格や下取り額を一つの確定値だと見なさず、上振れ・下振れの条件を試すのが望ましい。これは特定の車を購入する勧めではなく、IEAの示す価格と政策の重要性を各自の条件へ引き直す考え方だ。「世界で一番売れている方式」も「購入した瞬間に安い方式」も、個々の利用者にとって常に最適という意味ではない。

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数字が教えるのは順位より「条件を整えたら選べるか」

各国の普及率を並べると勝敗表のように見える。しかし「どの条件が整えば利用者にとって現実的な選択になるか」を考える方が、暮らしにも政策にも役立つ。購入価格が手頃か。用途に合う車種があるか。自宅や職場で普段の充電が可能か。制度が数年先まで見通せるか。長距離移動や集合住宅でも安心して利用できるか。こうした条件の答えが異なれば、同じEVの技術でも国ごとに販売比率は大きく変わる。

2025年の世界の新車4台に1台がEVという事実は、技術と市場の変化の大きさを示している。一方、日本が3%未満という数字は「全員が電動の車を拒否した」という証拠ではない。ハイブリッド車の存在、価格、供給戦略、住宅と充電条件を含めて初めて比較になる。世界で普及しているのになぜ日本では少ないのか。その核心は、車の魅力だけでなく、買って使い続けるための条件が国によって違うからだ。 2026年の数字を読むときは、対象が新車か保有車か、EVの定義は何か、2025年実績か2026年予測かまで確かめたい。[2][3]

SOURCES & CONTEXT

出典・一次資料

  1. IEA「Global EV Outlook 2026」2026年5月20日公表
  2. IEA「Global EV Outlook 2026: Executive summary」2025年実績と2026年予測
  3. IEA「Global EV Outlook 2026: Trends in electric cars」日本・価格・販売対象の脚注
  4. IEA「Global EV Outlook 2026: Electric vehicle charging」private充電、費用条件、250kW超対応車の範囲
  5. 米国エネルギー省(DOE)AFDC「How Do Plug-In Hybrid Electric Cars Work?」PHEVの電池・エンジン・給油
  6. 米国エネルギー省(DOE)AFDC「How Do All-Electric Cars Work?」BEVの外部充電

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