◎世界の見取り図THE WORLD IN CONTEXT

世界・雇用 · 若者失業率とNEET

世界の若者失業率は12.4%なのに「仕事も学校もない」人は20%――ILOの2026年報告を読む

ILOの2026年報告が示す2025年の若者失業率12.4%とNEET率20.0%。15~24歳を対象に、分母と重複の違いを架空の100人で計算し、雇用の質や男女差を含めた数字の読み方を説明します。

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事実、各国の主張、編集部の解説を区別して紹介します。記事の更新日は資料確認日です。速報や現在の戦況・選挙予測を保証するものではありません。

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12.4%と20%は別の問いへの答え

「若者の失業率が12.4%」と「若者の20%が仕事にも学校にも属していない」。どちらも国際労働機関(ILO)が2026年に公表した世界の若者の状況だが、同じ人数を別の言葉で表した数字ではない。前者は仕事を求める労働力の中で就業できない人の割合、後者は若者全員のうち仕事・教育・訓練のいずれにも参加していない人の割合である。[1][2] 分母も数える人も違うため、一方が小さくなっても他方が大きくなることがある。

2026年8月の『Global Employment Trends for Youth 2026』は、2025年の15~24歳の世界失業率を12.4%、失業者数を約6700万人、NEET率を20.0%、NEETに当たる人数を約2億5700万人とした。[1] 一見すると矛盾しているような数字は、若者が「働く」「仕事を探す」「学校にいる」「仕事を探すことも難しい」のどこにいるかを分ければ理解できる。問題の中心は、失業率がすべてを映す鏡ではないということだ。本稿では数字の仕組みを架空の100人の例で示し、その違いから2026年の雇用政策をどう読めるか考える。

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「失業者」は仕事のない若者全員ではない

失業率は通常、「失業者÷労働力人口」という計算だ。統計上の失業者は、仕事をしておらず、働ける状態にあり、一定の期間に仕事を探すなどの条件を満たす人をいう。労働力人口には働いている人と失業者が入る。学生が授業に専念していて仕事を探していなければ、一般にその学生は失業率の分母にも分子にも入らない。[2][3]

そのため「失業率12.4%」を、15~24歳の全員のうち12.4%が無職だ、と言い換えるのは間違いだ。世界には学校に通う若者が大勢いるし、家事や家族のケア、病気、求人の少なさなどを背景に仕事を探していない人もいる。失業率の分母には、そうした人の多くが含まれない。国ごとに労働力への参加率が違えば、同じ失業率でも若者の生活状況は大きく異なり得る。

もちろん、働く意欲があり仕事を探しているのに就けないことは重大な問題である。失業率には、雇用の入り口で実際に求職している人がどれほど苦しんでいるかを表す価値がある。ただし、まだ求職活動をしていない人、あきらめて探すのをやめた人を知るには別の指標が必要だ。

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NEETは「怠けている人」の分類ではない

NEETは、Not in Employment, Education or Trainingの略で、仕事に就いておらず、教育や訓練も受けていない若者の状態を示す。ILOの国際比較では主に15~24歳を対象とし、同じ年代の人口全体に対する割合をNEET率と呼ぶ。[1][4] 日本語で「ニート」というと本人のやる気や性格の印象と結び付けられがちだが、国際統計では決められた活動への参加状態を示す分類である。

ここには、職を探している失業中の若者と、今は求職していない若者の双方が入り得る。ILOの2025年の解説も、教育・訓練を受けていない失業者と、労働市場の外にいる人という二つの大きな構成部分を区別している。[3] 一方で、学校に通っている失業者や、仕事をしながら職業訓練を受けている人は、条件に応じてNEETから外れる。失業者数とNEET人数を足して「困難を抱える若者の総数」としてしまうと、重なる人を二重に数える危険がある。

また、NEETの中には、家族の介護や家事を長時間担う人、病気や障害で就労に制約のある人、就職活動を休止した人、働きたいが地域の交通や求人情報にアクセスしにくい人など、事情の異なる人がいる。統計上の「雇用に就いていない」が「何もしていない」という価値判断を意味するわけではない。必要な支援も一律ではなく、研修だけでよい人とケアサービスや医療などの環境調整が必要な人とを区別することが重要になる。

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100人の架空の町で計算してみる

15~24歳が100人いる仮想の町を考える。学校だけに通い仕事を探していない若者50人、働いている若者35人、学校に通わず求職中で働ける若者5人、仕事も学校も訓練もなく現在は求職していない若者10人とする。各集団は重ならず、この例に特殊な統計上の例外はないと仮定する。これはILOの国別実測値ではなく、計算方法を示す創作例だ。

この町の労働力人口は35人の就業者と5人の失業者を足した40人。失業率は5÷40×100=12.5%となる。一方、NEETに該当するのは、就業せず教育・訓練も受けていない求職者5人と非求職者10人の計15人だ。したがってNEET率は15÷100×100=15%になる。分母が40なのか100なのか、求職していない10人を数えるのかが違うため、二つの数字は一致しない。

今度は、失業者5人のうち3人が仕事探しを諦め、学校にも入らず非求職者へ移ったとする。ほかは何も変わらない。労働力人口は就業35人と失業2人の計37人、失業率は2÷37×100=約5.4%へ下がる。しかし仕事に就いた人は増えていない。NEETは求職中2人と非求職13人の合計15人のままで、率は15%のままだ。数字上の「失業率改善」が必ずしも仕事の増加を意味しないことが分かる。

逆に、学校を卒業した10人が仕事を探し始め、まだ就職できていなければ、失業率は上昇し得る。これは人々が仕事探しを始めた結果でもあり、単純に若者全体の意欲が悪化したとは言えない。だからこそ、失業率を見るときは就業率、労働参加、NEET率、教育在籍も並べて考える必要がある。[1]

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ILOの「6700万人」と「2億5700万人」は別の集団

ILOの2026年報告の概要によると、世界の15~24歳の失業者は2025年に約6700万人だった。一方、仕事にも教育・訓練にも参加していない若者は約2億5700万人で、総人口に占めるNEET率は20.0%となった。[1] 二つは、2026年10月に人数を数えた速報ではない。2025年を対象とし、各国の情報などを用いてILOが推計した国際比較の値である。

2023年のNEET率は19.7%で、2025年に20.0%へ上がった。増加幅は0.3ポイントであり、「0.3%しか増えなかった」と割合で表すのは違う。人数では約900万人増えたと報告されている。[1] 率の変化が小さくても、対象となる人口が大きければ絶対数の変化は大きい。ある国の若者が増えている場合、率が横ばいでも人数だけ増えることがある。報道の人数と率を同じ意味の改善・悪化指標にしないことが大事だ。

さらに、同報告の2025年の世界の就業する若者は約4億7600万人で、若年人口に対する就業者の比率は37.1%だった。人数自体は長期的に見て高い水準でも、人口の増加に雇用が追いつかなければ率は下がる。[1](第1章1.3) 4億7600万人が職を持っていることは重要だが、良質な仕事がどの程度あるのかまでこの数字だけでは分からない。賃金、労働時間、非公式雇用、社会保障の有無は別に確認する必要がある。

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失業率が低い国でも、働きやすいとは限らない

ILOの報告は、低所得国の2025年の若者失業率が平均8.8%と、上位中所得国の15.3%より低いという比較を示している。[1](第1章図1.2) 一見すると、所得の低い国の方が若者に仕事が多いように見える。しかし家族が生活のために何らかの収入を得なければならず、待遇の悪い仕事でも受け入れざるを得ない場合、失業者として長く求職活動を続ける余裕がない。仕事があることと十分な収入・安全があることは別問題だ。

例えば、週にごく短時間の有償の仕事をした若者は、統計の基準によっては就業者と数えられる。だが、その仕事だけで生活できるか、成長できるか、危険から守られているかは分からない。若者の経済的な苦しさを理解するには、失業率に加えて雇用の質も見るべきだというのが報告の重要な視点である。[1]

ただし、この説明を「低所得国の若者は全員、望まない仕事で働いている」と広げるのは不当だ。国・地域間の平均は個人の事情を示さない。低失業率の理由も一つではなく、人口構成、教育制度、産業構造、家族への依存、統計の対象などが影響する。読み取れるのは、失業率だけで良好な雇用環境を確定できないという限定された結論である。

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なぜ女性のNEET率が特に高いのか

2025年の世界の若い女性のNEET率は27.4%、若い男性は13.1%と、女性が2倍以上高かった。NEET状態の若者の3分の2超が女性だったという数字も報告されている。[1](エグゼクティブ・サマリー) この差を、能力や希望の違いだけで説明するのは危険だ。働くことや学ぶことを続けられる条件は地域・世帯・制度によって違い、家事・介護・育児の負担、通学や移動の安全、求人の条件などの障壁を考える必要がある。

注目したいのは、就業率と教育参加を組み合わせてみる方法だ。報告は世界の若者の就業率を、男性43.3%、女性30.6%と示す。[1](第1章1.3) ただし、この差を直ちに学校へ通う率の差に置き換えることはできない。ILOは学校や訓練への参加に男女差が小さくなっている点と、NEET率の男女差が残る点を併せて示している。教育段階の達成だけで、労働市場への移行が平等になったとは言えない。

だからといって全女性が仕事を望んでいると推定するのも正しくない。NEETは希望の有無を直接測る指標ではない。個別の家庭の選択を外から評価するのではなく、本人が望む教育、訓練、有償労働に参加できる環境があるかという政策上の問いにつなげる方が有益だ。

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国による違いは、分母と人口構成にも表れる

2023~2025年に若者失業率が上がった国・地域は105、下がった国・地域は58、横ばいは20と報告されている。[1](第1章図1.5) それなのに、ある大きな地域全体では率が低下する場合がある。人口の多い国の動きが地域平均を左右するためだ。国の数が多いことと、その地域全体の人数・率に与える影響が大きいことは同じではない。

報告が挙げるラテンアメリカ・カリブ海地域では、国別には失業率が上昇した国が多くても、人口の大きい一部の国の改善が地域全体の率に影響した。地域平均だけ見て「域内のどの国でも若者の雇用が改善」とは説明できない。[1](第1章Box1.1) 世界平均はさらに多様な国を重ねたものであり、個別の日本や特定都市の求人状況を直接予言するものでもない。

2026年版の報告は、世界・地域別の推計で主として15~24歳を用いる一方、国別の詳細な比較や技術別の分析には15~29歳を使うことがある。ILOSTATの報告用データ表示も、この年齢範囲の違いを説明している。[4] 「若者」の表示が共通でも年齢区分を見ずに数字を足したり比較したりしないことが、統計を扱う基本になる。

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AIが若者の仕事を奪った、と言い切れるか

最近は「生成AIが仕事を奪うので若者が失業する」と説明したくなる場面がある。ILOの報告はAIを重要な不確実性として扱い、初職の入り口や必要な技能の変化に注意を促している。[1](第2章2.2) しかし、2023~2025年の若者失業率の上昇をAIだけが引き起こしたと断定できるわけではない。経済成長の鈍化、紛争、企業の採用計画、職業と技能の不一致など、多くの要因が同時に動く。

特にAIにさらされやすい仕事と、AIによって完全になくなる仕事は別だ。文章作成や情報整理の一部が変わっても、顧客との調整や責任を伴う作業まで直ちに消えるとは限らない。企業がAIで効率化した結果、売上や新しい職が生まれる可能性と、初級の定型業務が減る可能性の両方を考えなければならない。現時点でどちらがどの国で上回るかは、予測と観察を分ける必要がある。

政策としては、初めての仕事に必要な経験をどう得るか、訓練に参加した若者が雇用へつながるか、単に短期の講座受講者を増やすだけになっていないかが重要だ。AIに対応する技能教育も、実際の求人と生活上の事情に結び付かなければ十分ではない。報告の将来論は、単一の技術へ原因を帰するのではなく、学校から働く場への移行を支える制度を見直すことにある。[1]

10

数字を見る人は、何を確かめればいい?

最初に対象年と年齢を確認する。「2026年報告」は、主に2025年の推計値と2026~2027年の見通しを示した文書だ。2026年中の新たな世界の全数調査が完了した、という意味ではない。ILOは2026年8月に刊行し、アクセス可能なPDFについて同年8月31日に一部のNEET推計表を修正したと明記している。[1](奥付) データの版まで見れば、過去に読んだ記事と細部が異なる理由も確認できる。

次に指標を確認する。失業率なら分母は労働力人口、NEET率なら若者人口全体だ。就業率なら働いている若者を若年人口で割る。数値が下がった場合、「失業から就職へ移った」のか、「仕事探しをやめた」のか、「学校へ戻った」のかは、それだけでは分からない。最後に地域と男女・年齢区分を見て、世界平均を個人への評価や自国の現状に短絡させないようにしたい。

読者が得るべき中心の理解は、12.4%と20%を対立する数字として比べるのではなく、別々の問いへの答えとして並べることだ。失業率は求職する若者の入り口の難しさを、NEET率は仕事にも学びにも参加できていない若者の広がりを捉える。両者の重なる部分、分母の違い、教育や雇用の質まで確認すれば、若者の暮らしを数字に隠さず考えることができる。

SOURCES & CONTEXT

出典・一次資料

  1. ILO, Global Employment Trends for Youth 2026: Back to the future, 2026年8月11日刊行、アクセシブルPDFの修正表示2026年8月31日。ISBN 9789220437612。特にExecutive summary、Chapter 1の図1.1・1.2・1.5・1.8、表1.4・1.5、Chapter 2。
  2. ILO, “Youth unemployment rises as young people face a harder road to decent work,” 2026年8月11日。
  3. ILO, “Measuring what matters: NEET vs youth unemployment,” 2025年8月12日。
  4. ILOSTAT, “Dataviz: Global Employment Trends for Youth 2026”, 対象年齢(世界・地域15~24歳、国別詳細15~29歳)の説明。

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