◎世界の見取り図THE WORLD IN CONTEXT

日本・電力系統 · 再エネの出力制御

太陽光の電気を「捨てる」のはなぜ?再エネの出力制御と送電網の仕組み

晴れた日に太陽光発電を抑えるのはなぜでしょうか。需給バランスと送電線の混雑、優先給電ルール、蓄電の限界を、MWとMWhの架空計算で読み解きます。

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事実、各国の主張、編集部の解説を区別して紹介します。記事の更新日は資料確認日です。速報や現在の戦況・選挙予測を保証するものではありません。

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発電できる量と、その瞬間に受け入れられる量は違う

晴れた日に大量の太陽光発電ができるなら、その電気はすべて使った方がよいはずだ。それなのに「再生可能エネルギーの出力制御」というニュースが出る。なぜ発電所に発電を控えるよう求めるのだろう。理由は、発電できる量と、同じ時刻に安全に消費・蓄積・送電できる量が一致しないことがあるからだ。 電力の安定供給には、需要と供給の細かな均衡だけでなく、送電設備を通せる量にも制約がある。電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、この二つを「需給バランス制約」と「流通設備混雑による系統制約」に分けて説明している[1]。

「電気を捨てる」という言い方は分かりやすいが、発電した電気をそのままごみ箱へ入れるわけではない。実際には発電設備の出力を下げ、まだ作っていない電気の発生を抑える。ここでは、必要な発電まで止める理由があるのか、火力発電が先に減らされないのか、余った電気を貯められないのかを、系統運用の手順から確かめる。

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電気は「一年に何億kWh」より「いま何kW」で困る

一般家庭の請求書では、電力量の単位kWh(キロワット時)を目にする。一方、発電設備が特定の瞬間に出す電力の大きさはkW(キロワット)やMW(メガワット)で考える。年間で見れば十分な電気があるとしても、ある晴れた日の正午に供給が集中し、夜間には不足することがある。年間の発電量が消費量と一致しても、時間ごとの需給が一致するとは限らない。

送配電事業者は、電気の需要、各発電所の出力、連系線の運用、蓄電や揚水などを監視・調整する。九州電力送配電は、需要と供給が崩れると周波数が大きく変動し、深刻な場合には発電機の保護停止や大規模停電につながり得ることを公式説明で示している[2]。ここでいう周波数とは、交流電力が繰り返す振動の速さだ。日本には東西で異なる周波数の地域があり、広域に融通する場合には設備上の制約もある。

したがって、発電所の「作れる能力」と消費者が「その瞬間に使える量」は違う。大雨のとき水を溜める場所や排水路が足りなければ水があふれるのと似ているが、電力では周波数や設備の保護という別の技術問題がある。余剰をそのまま許容するのではなく、発電側・需要側・送電側の調整が必要になる。

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春の晴れた休日に起こりやすいのはなぜか

太陽光は日差しが強い昼に増え、夜は基本的に発電しない。他方、電気の需要は気温、工場の稼働、休日・平日、日中の時間帯などで変わる。工場が休み、冷暖房の需要が小さく、太陽光がよく発電する条件が重なると、従来の電源を調整しても供給が余る可能性がある。

中部電力パワーグリッドは2023年4月の出力制御予告で、休日で工場などの需要が下がり、冷暖房が少ない気温と好天による太陽光増加が見込まれることを説明した[3]。これは特定の日の需給見通しであり、「毎年の春は必ず電力が余る」「晴れれば必ず出力制御する」という法則ではない。冬の暖房需要や夏の冷房需要、雨天や風の状態によって状況は変わる。

また、九州と北海道で同じ発電量だったとしても、需要や他地域へ送れる能力が違えば出力制御の必要性も変わる。出力制御が全国一斉に同じ時刻、同じ割合で行われるわけではない。地域ごとの需給予測と電力系統の条件に注目する必要がある。

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太陽光をいきなり止めるわけではない

「太陽光を止めるなら、火力や原子力を止めればよい」という疑問は重要だ。日本の需給バランスによる出力制御には、あらかじめ定められた優先給電ルールがある。OCCTOが公開する概要では、調整可能な電源の出力抑制、揚水発電の汲み上げ運転や蓄電池の充電、他の地域への広域的な電力融通、バイオマスの出力調整などを組み合わせ、なお余る場合に太陽光・風力の抑制へ進む[1]。

つまり火力発電も実際に調整対象となる。多くの火力発電所は燃料投入量などを変えて出力を動かせるが、発電設備には運転継続の制約がある。再エネの出力変動や夕方以降の需要へ対応するため、調整できる設備の存在自体も必要になる。九州電力送配電は、需要・風況・日射量の変化を主に火力などの運転で吸収していると説明している[2]。

原子力や一部の水力・地熱は、日本の優先給電ルールでは長期固定電源として位置づけられる。出力を短時間で大きく変えるのが難しい事情などから、単純に「発電原価の高い順に止める」とはならない。OCCTOの概要では、太陽光・風力の抑制後も余剰が解消しない場合には、電気事業法に基づく広域機関の指示を経て、長期固定電源の出力抑制を位置づけている。太陽光・風力の順番だけを切り出さず、その前後の対応まで読むと、調整が尽きた場合の扱いも分かる。[1]ただし、長期固定電源が物理的に一切止められないという意味ではない。優先順位と技術上の制約を、経済性への評価とは分けて考えたい。

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揚水発電と蓄電池なら全部受け取れるか

揚水式発電は、電力が余る時間帯に水を高い所へくみ上げておき、別の時間帯に水を落として発電できる設備だ。晴れた昼の電気を夕方に利用する工夫として役立つ。蓄電池も充電できる時間帯に電気を受け取り、後で放電する。ただし、これらには貯蔵できるエネルギー量と、単位時間に充放電できる電力の上限がある。

例えば容量100MWhの架空の蓄電池があり、最初からほぼ満充電だとする。名目容量が100MWhでも、その時点で受け取れる追加電力量は小さい。逆に十分な空きがあっても充電設備の出力上限が20MWなら、ある瞬間に100MWの余剰を全部飲み込めるわけではない。ここでのMWhは電力量、MWは出力であり、同じ単位として計算してはいけない。

電気を他地域に送る連系線も、無制限の管ではない。他地域の需要、線路の運用容量、流れる電気の向き、系統の安全余裕などに左右される。OCCTOは連系線活用などを出力制御前の選択肢として挙げる一方、設備混雑による制約を別に検証している[1]。蓄電・地域間送電があることと、すべての余剰を処理できることは同義でない。

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架空の電力系統で余剰を計算する

ここで、単純な架空の地域Aを考える。正午の需要が800MW、太陽光700MW、他の発電設備からの供給が300MWだとすると、合計供給は1000MWとなり、需要を200MW上回る。まず他の発電設備を100MW分減らせるなら、供給は900MWになり、余剰は100MWだ。さらに揚水や蓄電池の充電、他地域への送電で合計60MWを受け入れられれば、なお40MWの調整が必要になる。

架空の段階電力の出入り余剰
当初発電1000MW、需要800MW200MW
他電源を調整発電900MW、需要800MW100MW
追加で60MWを充電・送電発電900MW、需要+充電・送電860MW40MW
最後の出力制御太陽光を40MW下げる0MW

数値は説明のためだけの架空例で、どこかの電力会社の実測値ではない。実際には発電所ごとの最低出力、計画誤差、送電損失、需給調整能力、周波数維持などの条件が重なる。40MWを一時間抑えた場合、単純化すれば40MWhの発電機会を失うが、出力制御の時間が一時間未満なら電力量はそれより小さい。発電量の割合を論じる際も、MWとMWhを混同しないことが必要だ。

この例から分かるのは、再エネの設備が余っているからではなく「ある瞬間に余剰を受け入れる先が不足した」ことが問題になる点だ。一方、この計算だけでは実際の優先順位や制御対象の選定が適切だったと証明できない。現実の検証には運用記録が必要になる。

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送電線が混雑している場合は事情が違う

電力系統の「余る」にはもう一つ意味がある。需要の総量は足りていても、特定の送電設備を安全に通せる能力が不足することだ。例えば地域の北側で太陽光の発電が急増し、南側の工場に需要があるとする。北と南を結ぶ線路が混雑していれば、地域全体では電気が不足していても、一部の発電を抑える必要が生じ得る。

OCCTOは、このような流通設備混雑による出力制御を、需給バランス制約とは別に説明している[1]。特にノンファーム型接続は、混雑したときの出力制御を条件に、既存の送変電設備を活用しながら新たな電源を接続できるようにする仕組みだ[5]。出力制御の仕組みや対象電源は、需給過剰の場合と全く同じとは限らない。

「電気が余っているのに別の地域では足りない」という見出しを見たら、なぜ発電地と需要地がつながらないのか、送電設備の容量・運用制約、連系線の状況まで確認する必要がある。再エネを増やす議論では、発電所の建設だけでなく、需要地との接続を整えることが重要になる。

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出力制御を減らすには、何をどこに増やすべきか

考えられる手段には、余剰の出る時間へ電力使用を移すこと、蓄電池・揚水の活用、送電容量や広域連系の改善、発電出力の予測精度向上、制御しやすい需要や供給の増加がある。いずれも効果は場所と時間帯によって変わる。全国で同じ手段を増やせば同じだけ制御が減るという計算はできない。

たとえば昼の余剰が大きい地域で、電気自動車の充電や工場の工程を昼へ移せるなら、余剰が出る時間帯の需要が増える。ただし家庭・事業所の都合や充電設備の能力によって変更できる幅は限られる。蓄電池に投資する場合も、余剰時の充電と不足時の放電がどれだけ可能か、利用可能な時間と寿命、費用を見なければならない。

送電線を増やせば万能というわけでもない。建設までの時間、立地、系統安定性、利用される時間帯によって費用対効果は異なる。中部電力は、出力制御を前提にすることで他の多くの時間に再エネを受け入れられ、総量として再エネの発電を増やせる場合があると説明している[4]。制御をゼロにする費用と、ある程度の制御を許して設備導入を進める判断は、実際のデータで比較する課題だ。

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制御した電力を「損失額」に直すときの注意

抑えた発電量を電気料金単価で掛ければ、必ず経済損失が計算できると思うかもしれない。しかし、発電事業者が受け取る単価、売電方式、出力制御に関する契約、実際に発生しなかった燃料費や運転費用は、単なる小売料金とは異なる。市場価格が低い時間帯に制御した電気と、需要の大きな時間帯に制御した電気を、同じ価値で評価する根拠もない。

たとえば架空の試算で、50MWhの出力制御に小売料金30円/kWhを掛けて150万円と計算したとする。単位換算の算術は50,000kWh×30円=150万円で正しいが、それは電力会社や社会全体の確定した損失額ではない。収益制度、契約、実際の電力市場、代替の費用を調べなければ損失は決まらない。発電できたはずの電力量と、金銭的な影響を混同しないことが必要だ。

設備を増やす計画にも同じ注意が必要だ。蓄電池を新設すれば出力制御は減る可能性がある一方、建設費・運用費・充放電で失われる電力が生じる。費用や温室効果ガスの影響を評価するには、削減できた抑制電力量と追加設備の条件を別々に測定する必要がある。

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計画上の出力制御と実際に抑えた電力の違い

系統運用では、翌日の天気や需要を見込んで発電設備へ制御を依頼する場合がある。その後、実際の日射量が予測より小さくなれば、発電できる量も変わる。制御指令が出たことと、最終的にどれだけの電力量を抑えたかは同一でない。中部電力パワーグリッドの2023年の発表も、実際の当日実績ではなく翌日の需給見通しに基づく制御指示を説明したものだ[3]。

報道で制御指令が発表された日を数える場合と、運用終了後に抑制電力量を集計する場合では、元データの性格が異なる。制御の妥当性を判断するときには、予測段階で何が分かり、当日にはどの調整を行い、最終的にどの程度抑制したかを分けて読む必要がある。予測が外れた事実だけで不当な指令だとは断定できない。

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ニュースで確認するべき三つの指標

第一は制御の理由。供給過剰なのか、送電線の混雑なのかで、対策は変わる。第二は出力制御の量と分母。一定日の出力制御MWなのか、期間内の抑制電力量MWhなのか、発電可能量に対する比率なのかを確認する。第三は予測と実績。前日の計画をそのまま実際に抑えた量とみなさない。

電力広域的運営推進機関は、出力抑制に関する事業者の指令の妥当性を事後検証し、公表している[1]。ニュース記事が「○回発生」と数えているのか「○億kWhを抑制」と測っているのかでも意味が変わる。回数が多くても各回の時間が短ければ抑制電力量が小さいことがあり、逆もある。年間の推計値を、個別日の実際の発電損失と置き換えないことが大切だ。

そして制御が発生した事実だけから「再エネ政策の失敗」「必ず不当な差別」と評価するのは早い。誰がどのルールで発電を抑えたのか、先に行うべき調整を実施したか、公表された検証結果を合わせて読む必要がある。

太陽光の電気を「捨てる」と呼ばれる現象の中心は、エネルギーが無価値だからではない。同じ時刻の需要・蓄電・送電に受入限界があり、電力系統を安全に保つために発電を抑える場合がある。 その限界は調整できる電源、蓄電池、連系線、送電設備、需要の時間帯によって変わる。発電所だけでなく、電気を運び使う仕組みも合わせて考えることが、再エネのニュースを理解する近道となる。

SOURCES & CONTEXT

出典・一次資料

  1. 電力広域的運営推進機関(OCCTO)「再生可能エネルギー発電設備の出力抑制に関する検証」(公表日・改訂日未確認、2026年10月17日閲覧)
  2. 九州電力送配電「出力制御の必要性について」(ページ公表・更新日未確認、2026年10月17日閲覧)
  3. 中部電力パワーグリッド「中部エリアにおける『再生可能エネルギー出力制御』指示の実施について」(2023年4月7日、2026年10月17日閲覧)
  4. 中部電力「2025年5月度定例記者会見」(2025年5月、2026年10月17日閲覧)
  5. 中部電力パワーグリッド「発電設備の出力制御について」(公表・更新日未確認、2026年10月17日閲覧)

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